研修医の足跡

初期研修医の実際の毎日をご紹介

令和4年8月18日 夜の勉強会

消化器内科N先生 テーマ「急性腹症」

急性腹症とは?

急性腹症とは、発症1週間以内の急性発症で、手術などの迅速な対応が必要な腹部(胸部等も含む)疾患である。

急性腹症の明確な定義はなく、急激に発症した腹痛の中で緊急手術を含む迅速な対応を要する腹部疾患群を急性腹症と呼ぶ。腹痛は消化器疾患に由来することが多いが腹部臓器以外の疾患でも起こるため、注意深い病歴聴取と局所および全身の診察所見に基づいて適切な初期診療を行う必要がある。腹痛の発生メカニズムと病態を正しく把握して緊急手術を含む迅速な初期対応により重症化を防ぐことが求められる。

 

■腹痛を訴える患者がバイタルサインに異常を呈している時に考える疾患

超緊急疾患 緊急疾患
考えるべき疾患

・急性心筋梗塞
・腹部大動脈瘤破裂
・肺動脈塞栓症
・大動脈解離(心タンポナーデ)

・肝がん破裂
・異所性妊娠
・急性腸管虚血
・重症急性胆管炎
・肺血症性ショックを合併した汎発性腹膜炎
 (下部消化管穿孔に多い)
・内臓動脈瘤破裂

対応

即時に治療を開始する。採血結果などを待つ
時間はなく、CTも危険な場合がある。
心電図、心臓・腹部超音波検査が診断に有効
であることが多い

緊急手術/IVRが必要。
血液検査やCTの結果を待つ余裕がある
場合が多い

 

■腹痛を訴える患者に行う検査

1.超緊急疾患の鑑別に
 必要な検査

・腹部・腹部単純X線検査                                           ・腹部・心臓超音波検査
・心電図

 

2.緊急疾患の鑑別に
 必要な検査
(1.の検査に追加する)

・血液ガス分析(PaO₂、PaCO₂、pH、BE、HCO₃、    ・血液型
 血糖値、乳酸値)                  ・尿検査(女性の場合は妊娠反応含む)
・血液・生化学検査(血清、電解質、肝機能、腎機能   ・血液培養
 リパーゼ/アミラーゼ、心筋逸脱酸素、血糖値、CRP、    ・腹部(造影)CT(可能であれば必要時)
 肝炎ウイルスマーカー)