研修医の足跡

初期研修医の実際の毎日をご紹介

令和5年8月15日 朝の勉強会 

テーマ「熱中症」 G先生

症例:80歳代男性 主訴:倦怠感・嘔吐 

受診前日から倦怠感があった。受診日の昼過ぎに家族が様子を見に行くと嘔吐していたため、家族に連れられて受診。室内にエアコンはなく、窓も閉まっていた。

既往歴:糖尿病、内服薬:メトホルミン

意識レベル:JCSⅠ‐1 BT39.5℃、HR130/min、BP110/50mmHg、RR25/分、SpO2 97%(RA)

 

「熱中症」とは限らない

 

日本救急医学会熱中症分類2015(JAAM2015)

新分類 重症度 症状 治療 病態からみた分類

 

Ⅰ度

軽症

めまい

大量の発汗

欠伸、筋肉痛

筋肉の硬直(こむら返り)

(意識障害を認めない)

通常は現場で対応可能

→冷所での安静

体表冷却、経口的に水分とNaの補給

 

熱ストレス

 熱浮腫

 熱失神

 熱けいれん

 

Ⅰ度の症状が徐々に改善している場合のみ、現場の応急処置と見守りでOK

Ⅱ度

中等症

頭痛、嘔吐

倦怠感、虚脱感

集中力や判断力の低下

(JCS1以下)

 

 

 

医療機関での診察が必要

→体温管理、安静

充分な水分とNaの補給

(経口摂取が困難な時には点滴にて)

熱疲労

Ⅱ度の症状が出現したり、Ⅰ度に改善が見られない場合、すぐ病院へ搬送する

Ⅲ度

重症

下記の3つのうちいずれかを含む

(1)中枢神経症状(意識障害≧JCS2、小脳症状、痙攣発作)

(2)肝・腎機能障害(入院経過観察、入院加療が必要な程度の肝・腎障害)

(3)血液凝固異常(急性期DIC診断基準(日本救急医学会)にてDICと診断)

入院加療(場合により集中治療)が必要→体温管理

(体表冷却に加え体内冷却、血管内冷却などを追加)

呼吸、循環管理

DIC治療

 

熱射病

 

Ⅲ度か否かは救急隊員や病院到着後の診察・検査により診断される

take home message
  • 体温の上昇を見たら発熱なのか高体温なのか判断する。
  • 高体温を見たら熱中症以外の疾患の可能性も頭の片隅に置いておく。(既往歴、薬剤歴をcheck)
  • 熱中症の初期対応は冷却、脱水補正を行いながら、臓器障害の評価と治療